人間にはいくつもの顔があることを受け入れる
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「人間には、いくつも顔がある」
最近建築学生と話す機会が多く、「自分は建築に向いていないのでは」と相談を受けることがあります。建築学生に限らず、他の分野を学ばれている学生や社会人にもおすすめの一冊を今日はご紹介します。
平野啓一郎さんの「私とは何か」です。
私もこの本を読んで、生き方や考え方にゆとりが持てました。
この本では、「人間には、いくつも顔がある」ことをまずは受け入れようと言っています。ついつい誰に対しても同じような自分でないと、「自分を偽っている」ような気分になり、後ろめたさを感じてしまうことがないでしょうか。
なんとなく、学生の「建築に向いているか不安」という悩みを聞くと、四六時中建築について考えているような、「建築好きの人間でないと建築設計は務まらないのでは」という強迫観念を抱いている印象を受けます。私も、建築家というのはどんな時でも建築について考え、どんなことでも建築につなげて考えることができるような人でないといけないと思っていました。
でも、日々の生活というのは食事をしたり、家事をしたり、家族と話したり、友人と会ったりと、建築人という顔だけでは対応しきれないことがあります。
「結局、教育現場で「個性の尊重」が叫ばれるのは、将来的に、個性と職業とを結びつけなさいという意味である。(中略)手紙を届けるのが得意な人がいるから、郵便局が作られたのではなく、手紙のやりとりが必要だから、郵便局が作られ、そこで働く人が求められているのである。そして、職業の多様性は、個性の多様性と比べて遥かに限定的であり、量的にも限界がある」
原理的に考えない・白黒をつけないことの大切さ
私たちはついつい原理的に、潔癖に物事を考えがちになります。特に体感として、若い時こそ、その傾向が強いように思います。またこれも体感としてですが、世界が狭いとそういう傾向が強いように思います。色々な人と話したり、色々な本を読んだり、色々な場所にいくと、自分の固定的な思考が少し柔らぎます。
「建築に向いているか」と悩むよりも、まずは色々な物や人、事に触れることの方が、視界が開けるように思います。その一助として、この本の紹介が役に立てると嬉しいです。
私は建築設計を生業としていますが、週に一度は地域に本の貸し出しをするという活動をしています。自分が想像するよりも、色々な人に来館いただき、楽しいです。もし興味があれば遊びに来てください。建築学生も大歓迎です。
私設図書館の案内
シン設計室が運営している私設図書館でも今回紹介した本も閲覧・貸出し可能です。詳しいアクセスやご利用案内は下記からご確認ください。